自己紹介
はじめまして、アリサカ・ユキと申します。
たとえば、経歴といえば、語れることがないのです。一度だけ、純文学の雑誌の賞の一次選考に別のペンネームで名が乗ったことがあります。中学生時代は暴力を受け、高校生時代には人を信じることができず3年間友だちを作れないどころかまわりが恐怖の対象でしかなかったです。お勉強どころではなく、学校は何の意味もない苦行であるだけの場でした。結果、高卒で統合失調症。うまく社会で泳げなかった長い時間の記憶を持っているだけ。ずいぶん長いときがたち、人格を回復いたしました。
けれども、組織という集団の中では生きていけない人間です。どうしても、周りに強い違和感を感じます。2024年の冬の終わりに職を離れて、いま、ブログやKindleの電子書籍を出版することを、頑張っております。自分にできることを試したくないですか。
物語は、なにを与えてくれるでしょうか? それは、ぼくがこのブログや小説を書くことの理由でもあります。
それを一つの物語で、表現したいと思います。どうぞ、お楽しみください。
戯曲 光の学徒オフェーリア【特別編】
登場人物
オフェーリア 光の学徒と呼ばれる学園の才媛。18歳。
オーパス 人間関係に疲れて中学校を不登校になった13歳の少年。
本編
春の暖かな空気。車道側には桜の花が咲き乱れている。あるカフェから女が出てきた。ブレザーの学生服を着ている。高校生だろう。右手に蓋のついた紙コップのコーヒーを持っている。
(オフェーリア登場)
オフェーリア 心地の良い天気ですこと。人々の顔つきまで穏やかに見えますわ。さて、午後の授業が休講になったのですけれど、何を致しましょうか。考えつくのは図書館へ行くことくらいですわ。あ、あの人?
彼女の方へ、荒っぽい足取りで、まっすぐ向かってくる少年がいる。
(オーパス登場)
オーパス 世界は罪にまみれている。あいつは何をした? 自分の掃除という仕事を俺に押し付ける! あいつは? 強いことの言えない俺をみんなの前で馬鹿にする! あいつだったら? 俺はいつもそいつに理由もなく殴られる! 裁きの神は言うだろう。世界、滅ぶべし! あはは、そうだ。この世界の意味などと!
(オフェーリアにオーパスぶつかりそうになる)
オフェーリア キャッ!
オーパス どけ、女! どうしてもお前も、厚顔にも人をはかり、自らに益なしと思えば、そいつをゴミクズみたいに扱う輩だろう!
オフェーリア !? なぜそう思うのですか?
オーパス 思う? 違う。世界がそうなっているのだ。世界の姿がそうなのだ。思う、ではない。
オフェーリア あなたは強いのでしょう。お話が聞こえましたから。
オーパス 俺の言葉のどこに、俺の強さがある? 全て弱さではないか。そうだ。俺は今日、病院で向精神薬をもらった。狂っているのだ!!
オフェーリア 人が狂わないでいられるのは、誰かを苛むからです。そうすれば、自分を見なくて済むのでしょう。
オーパス そんな極論……。
オフェーリア それでもあなたには世界がそう見えるのでしょう?
オーパス そう……。そうだ……。俺は力が欲しい。俺を苛んだ奴らに復讐できる力が!
オフェーリア それは不幸でしょう。
オーパス そうだな。俺を苦しめた奴らには不幸だろうよ。
オフェーリア そうして、あなたは本物の弱者になる。そのような不幸は、自らの弱さが促すものですから。
オーパス しかし、あいつらは自らの汚さをうまく隠して、いつもうまいスープを手に入れている!
オフェーリア 彼らが手に入れたものがそんなに羨ましいですか? 強く見せてる人はより弱いものを苛む。弱いものは同じような弱いものと苛み合う。あなたは、そんな、なんの生産性もない虚しい競争に参加してはいないのでしょう? だから、苦しい。
オーパス 世界など消えてしまえば良い。
オフェーリア それで、どうしますか? 世界を恨んだままに? あなたを苛む人たちにそう思わされて?
オーパス なら、今、世界が美しいことをここで証明して見せろ!
少女は、無言で、左手を挙げた。そして、桜の木々を指差す。
オーパス 確かに俺も入学式の日は心が躍ったものだ。しかし、運命がこうだと知っていれば、泣きながら通学路を通っただろう。
オフェーリア わたくしは確信しています。
オーパス あ? 何をだ?
オフェーリア 桜と同じものから、人間はできているのです。それはうつくしい……。あなたは、誰かがひどいと言わずに、あなた自身がよく生きることを望むのです!
オーパス バカなことを。俺は言ったはずだ。弱いんだ。
オフェーリア いまは雌伏の時です。ご本を読み漁りなさいな。あなたや他の人の弱さをよく見なさいな。そして強さとは何かを見極めるのです。時がくれば、あなたは立ち上がるでしょう。それは、一年後かもしれないし、五年後かも知れず、十年以上かかるかも知れません。果実が熟れるには個人差がありますから。それでも、希望はあると信じることです。
少年は、じっと少女の目を見た。そして……
春の穏やかな空気が舞う中で、少女は、静かにコーヒーを飲んだ。ずるずるずる。冷たくなったそれは、しかし、春の陽気があれば、おいしいものであった。
(了)

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