そもそも相手とまったく違う。でも、歩み寄りは無意味じゃなかった。(「派遣者たち」 キム・チョヨプ 早川書房)

小説

派遣者たち
キム・チョヨプ
カン・バンファ訳
早川書房

ぼくたちは、いま、多様化の時代を生きようとしています。

しかし、たとえば、あなたは、マイノリティーといわれる人たちのことがまったく理解できないかもしれません。極端に言うと、たぶん、多くの人は現在の社会において、「歩きタバコをする人」のことなんてわかりたくもないでしょう。煙を吸ってしまい、こちらが癌になったらどうする? と憎しみももつかもしれません。もちろん、歩きタバコをする人は吸う人の都合でやっているのだと思います。しかし、どんなことも、人にとっては自分の都合があるのだと思います。(歩きタバコは推奨いたしませんが)。

「派遣者たち」では、地球に氾濫体という存在が現れて、人間から地上を奪いました。

彼らには彼らの都合がありました。そして、地上はもともと、人間のものだったのか? お互いはお互いを理解できません。ただ、自分の都合を押し付けるだけです。そんななか、頭に声のする女性、チョン・テリンは、氾濫体から地球を奪い返す「派遣者」になろうとしていた。そして、氾濫体が何なのかを知ります。それは、受け入れ難いものだったけれど、テリンは何がするべきことなのか、がわかった……。

あらすじ

氾濫体という一見、菌のような存在のために地上に、人間は住めなくなりました。

地下の街。

テリンの隣の部屋がら聞こえてくるラジオが3年前の話題を放送している。おかしなことだと思う。

ある日、彼女の頭の中に突然何者かが住み始めた。

「派遣者」になる試験があるときに困ったものだ!!

しかし、その何者かのおかげで試験はうまくいく。

だけど、テリンはその後、とんでもないことをしてしまう。

言い渡された贖罪の危険な任務。志願制だったけどどの「派遣者」もしたがらないもの。

人に取りつき、その心身を変容させる「氾濫体」の蔓延る地上へ上がり、仲間と旅をする。

そして、ある真実へと辿り着くがーーー。

理解し合えないもの同士が歩み寄ることができる、また、反対に理解し合いたいもの同士が決裂することもある。

存在は、愛の大小だけで、その関係がよいか悪いかと決められるわけではありません。

ささいな真実の愛が、誰かを救い、大きな歪んだ愛が、誰かを傷つけるかもしれません。誰かを救うために、大切なものを犠牲にする、または、誰かを救うために、利用して良いと思うものを犠牲にする、そんな選択もあるでしょう。愛とは何なのでしょうか?

正しい道とは何なのか。それが、誰もが手を取り合っていくこと、だと考えるならば答えは簡単なように思います。でも、それならばなぜ、この地球から争いが無くならないのか? 国同士の戦争から、個人的な諍いまで。どうすれば、どうしたら、相手をぼくたちは、理解したことになるのか? 

「派遣者たち」というご本は、そのことも描かれているのだと思います。それは、この社会における人間の自由につながるお話です。

インパクトシーン

「イゼフ、お願い。あの人たちは生きてるの。わたしと同じ存在なのよ。彼らを道具扱いするなら、わたしにだけそうしないのはおかしい」
「生きているからといって美しいわけじゃない」

「派遣者たち」より抜粋

これは、

主人公のテリンが大好きな相手と交わした言葉です。

 
その人は、イゼフという女の人なのですが、

利用して使い捨てにしようとする人たちのこと

(氾濫体に侵されています)を

「美しくない」と言い放ちました。

これは、「氾濫体」に犯された人は

人間とは姿が異なってくるから、

という意味じゃないわよね?

だと思いました。

これは、イゼフの

人間一般に対する理解だと。

じっさい、

たまに、とんでもない人に出会うわよ。

 
えー、この人、こんな酷いこと普通にする? みたいなさ。

「美しくない」という言い方に、

ぼくは、

それを口にした彼女の深い悲しみを感じました。

なるほど。人間は、限りなく高いものであってほしいのね。

彼女は「派遣者」として、生きていくうちに、

いろいろ歪んだ面ができたみたいだわ。

 
彼女の端々の言動からそれが伝わるわ。

このご本は、歩み寄りのお話だと感じました。
二人は、この後、分たれます。
そして、テリンは、このイゼフという人に、
物語の最後に何をしたのか。
 
ぼくは、愛というものの、深さを感じたのです。

それは、ぜひ、「派遣者たち」を読んで、

感じてみてほしいわね!!

たのしく、感動もしますよ!! 

ちょっと怖いホラーな感じもあって、ゾクゾクもします!!

 
おすすめします!!

読んでみてね!!

下記、ご本になります。

今回は以上になります。

若いかたにも大人のかたにも、今日、いま、

あなたの青春の時間に参加させていただいたことに感謝いたします。

それでは、また!

管理人
アリサカ・ユキ

ぼくはずいぶん長い間とても弱かった。勝手な自己主張の上手い人たちに、いろんなやり方でいいように扱われていました。

物語からほんとうの強さというものを知りました。それは、なにかをわかること、そして、それへのやさしい想像力で得ることもできる、ということ。ぼくは卑怯な人に抵抗できるようになった。優しい人の味方になれるようがんばれるようになった。

あなたを翔けさせる素晴らしい物語たちを伝えたいです。

毎週、月曜日の更新を心がけます(変則的になる場合があります)。

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管理人はトランスジェンダーであり、トランスエイジです。

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小説愛と喪失(愛がわからなくなったら)
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