「地球の果ての温室で」おまじないみたいなもので相手の気を引いてみる。それでもしその人が自分を好きになってくれたら、あなたは嬉しいですか? むりやり気持ちをコントロールしたことが辛いですか? 真実の愛とは。(著者 キム・チョヨプ 早川書房)

小説

地球の果ての温室で
キム・チョヨプ
カン・バンファ 訳
早川書房

好意を引き出したい人がいる。でもその人はいつも無愛想で。

こちらに振り向いて欲しくて、いろいろ試すかもしれません。あなたが健全な努力でがんばってみるならそれはフェアなことでとても素晴らしいことです!! でももし、相手のどこかにボタンがあって、それを押したら好きになる、そういうのがあると押しますか? 

それは例えば嘘をついて、相手の気を惹くようなものです。

結ばれた後に相手がその真実を知ると、どうなるでしょうか!!

あらすじ1 ナオミ、アマラ パート

ダストという地球の生命を根絶やしにする現象が起こって久しい。ナオミは13歳。強い耐性種だ。ダストから守られた町ドームの人間から人権を無視される。その耐性を手に入れるために、奴らは耐性種に実験をする。ひどいことをするのだ。

ナオミと姉のアマラは隙を見て逃げ出した! 外はダストでアマラの命が危ない。それでも、ドームには行けない。やがて、ドームに頼らなくて人びとが生存している場所を見つけます。そこでは、整備士と植物学者がリーダーで、絶滅したはずの作物を育ててさえいた。

フリムビレッジ。

住民たちとの絆ができ、そこで一生を過ごしていくものだと思っていた。

あらすじ2 ジス、レイチェル パート

身体のほとんどを機械化している。ジスは整備を依頼してきたレイチェルを初めて見たとき、驚いた。レイチェルはそれで、毒性を持つ植物の研究を、その毒を気にせずにやれる。しかし、この人は性格が悪い。もう会わないと思っていた。

ダストが突然始まった。

食物や移住地をかけた戦争があり、ジスは疲れていた。さまよいたどり着いた先で、レイチェルにふたたび出会う。

レイチェルは、作物が作れる。ダストの毒を分解する薬も作れる。そのレイチェルをメンテナンスできるのはジス。その協力関係。

二人きりの場所に、村ができた。人びとが頼ってくるのだ。

ジスはレイチェルの好意を受けたかった。身体が機械だからか気持ちを渡してくれない。

ある日、レイチェルの整備でほぼ機械化された脳を扱うとき、彼女の感情パターンを調節できることに気づいた。ジスは誘惑に負けた。

「好きなの」

その言葉に、ジスは罪悪感を抱き、ことを知ったレイチェルは怒り狂う……。

そのころ、村はその資源を狙う外部者の攻撃により、崩壊寸前だった。

なぜ、ぼくたちが愛を求めるのか。

生きる力を得るためかもしれません。そして、相手にもあなたにも惹かれることが異なります。

ジスのレイチェルへの好意は、感謝されたいとかそういう思いでいたようです。だけどレイチェルは、ジスを「愛した」。ジスは混乱をする。そしてふたりは、村が略奪者に蹂躙されるなかで、別れるのです。

レイチェルは、実は、ジスとであったときから、惹かれていた節がある。

ジスも本当はレイチェルのことが好きだったのかもしれない。

ダスト時代が終わった後に、レイチェルのことをずっと探していたようなのです。

しかし、人間には時間の限界があります。

レイチェルは、ダスト時代を調べる女性から、ジスのことを聞きます。レイチェルは機構上泣けないのだけど、泣いているようだと、女性は彼女を見ないようにした……。

そして、レイチェルは、自らを解体することに決めたのです。

ダスト時代からのち、ジスとレイチェルに、

生きる意味を与えていたものは、通じ合っていたはずの愛なのです。

そして、フリムビレッジでやさしかったジスに、ナオミも会いたがっていた。

マイナスの時代から復興した時代を描いていて歴史的な観点をもちながら、文体は若々しい、胸を揺さぶるSFです!!

《ささる言葉》

わたしはジスさんを見上げながら訊いた。(…)何か言いたくてもどかしそうな様子だったが、それは言葉となって出なかった。その短い沈黙が教えてくれた。わたしに嘘をつきたくないのだ、それだけわたしを大事に思ってくれているのだと。

「地球の果ての温室で」より抜粋

これは、ナオミの心象ですね。

例えばドームに住む人間は、
自らが生きるためにたくさんの弱者を犠牲にしています。
 
そんな世の中を「賢く」生きるジスが、
言いたくないことをそれでも

「嘘をつきたくない」と思うのは
とても大きなことではないでしょうか。

うん。
それとジスはもともと、
根が良い人なんじゃない? 
ひどいところでも自分を見失わない人。
たいてい、
人の気持ちを考えなくなった大人っていうのに出会うわよ。

ナオミはこのとき、13歳くらいです。
感受性が強く傷つきやすい年ごろですよね。
そんな年ごろに、
ジスさんみたいな人に出会えて、
素晴らしいな、とぼくは思いました!!

誰彼にいい顔するわけでもない、
芯の強さが、ジスにはあったわね。

管理人
アリサカ・ユキ

ぼくはずいぶん長い間とても弱かった。勝手な自己主張の上手い人たちに、いろんなやり方でいいように扱われていました。

物語からほんとうの強さというものを知りました。それは、なにかをわかること、そして、それへのやさしい想像力で得ることもできる、ということ。ぼくは卑怯な人に抵抗できるようになった。優しい人の味方になれるようがんばれるようになった。

あなたを翔けさせる素晴らしい物語たちを伝えたいです。

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管理人はトランスジェンダーであり、トランスエイジです。

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