楽をするための自由。果ては破滅だった。(「冬の旅」 監督アニエス・ヴァルダ prime video)

映画

冬の旅
監督アニエス・ヴァルダ
prime video(2024年12月16日サービス適応内)

自由が欲しい。

それは多くの人が漠然とも求めているのかもしれない。自由とはなんだろう? 少女モナにとってそれは、誰からも束縛されないことだった。

(あらすじ)

モナは冬の空の下、ヒッチハイクで旅しています。

「放浪か?」

「キャンプよ」

テントを持っていて、いろいろなところに野宿をします。

ときおり、比較的濃密な人間関係ができます。その人たちの中には親切にも雇ってあげようか? と提案します。

「自由にいたいの」

モナは全てを断った。

最後はある駅で、不良の仲間になります。家はないのですが、比較的気だては良かった彼女は、素行も荒くなり、彼女を探していた人からも見限られるのです。

愛すらも軽く。

モナは「冬の旅」中、幾度か、恋人ができました。いろいろなことで結局は別れることになります。そのとき、少女にとって、じっさいは、相手の人はそんなに大切ではなかったのか、というくらいあっさり別れます。自由ばかりにこだわるモナは、恋愛というのを束縛と同義としていたのかもしれません。

失敗を繰り返す旅。見えたものは。

少女は、自由を求めて、自分なりに運命を選択しましたが、何もかもがその「自由」へと結び付かなかった。そうでした。彼女の自由は、他者を切り捨てる身勝手なのです。しかし、最後の方で、心を開くところがあります。ある男性を信じたのです。ただ、今度は、相手が弱腰でした。その後、悪い仲間と付き合うことになります。およそ誰かと共同して何かをなすという成熟した心がなかった少女が、やっと、見つけたかもしれない生きていく道、は断たれたのです。今回のブログでは、モナが、いつまでも自分がしたいようにする幼児性を発揮した結果、得た結末を見ます。

ただ、愛されたのです。

いろいろな大人に。彼女を助けたいという人たちはたくさんいた(人によっては性的な暴力もありましたが)。そんな優しい人たちを信じて、人生を生きていこうとできず、ギスギスとした世界に自ら行ってしまった。劇中のある哲学の先生は言います。

「反体制をきどっているが、ただの現実逃避だな、甘いよ」。

ある意味過酷な現実を見たような気にもなりました。

ひとは、一人では生きられないとは、よく聞きます。それは、いろいろな人が関係しあい、直接間接に協力をして生活というものが成り立つのだと思います。もちろん、ぼくたちはそんな関係をわずらわしく感じることもあるかもしれません。けれども、やはり、「一人では生きていけない」のです。少女はそれをしようとした。しかし、食べ物をもらったり寝床を借りたり、けっして、一人では生きていない。ただ、ただ、一方的にお世話をしてもらっていたのです。モナが仲良くなったお金持ちのおばあさん。彼女が施設に入れられるというセリフのシーンがあるのですが、これは、モナの生き方の映画の作り手の暗喩的な結論めいたメッセージなのかもしれません。(人生の、一つのモデルケースだと思います)。

語りのミニシアター

シノ
シノ

なんともつらくなるご作品だったわ。

アリサカ
アリサカ

しかし、誰にとっても自由は欲しいもの。
 
モナは、しかし、最終的に自由でないどころか、
究極の何もできないということになるのですが、それは? 

人の好意を受け取れなかったからかなあ。

好意を受けることは人間関係において大切なことですよね。
 
人の好意が重い、と感じる方もいるかもしれません。
それはもしかしたら相手が無理な好意を示しているからかもしれません。

あるわね!! 
たとえば、自分の優しさを自分で味わうために優しくしてくる人? 
好意をことあるごとにあんまり示してくるのは
少し病んでる人って思ったりするわ。

もちろん、本当にこちらを思ってくれる好意もあるでしょう。
モナはホームレスだったのです。
就職を世話してくれる人がいたのです。
 
生活をしなくてはならない。
自由な時間を犠牲にして働く。
それは、こちらの仕事で、誰かが助かるためです。
人の仕事は誰かのためのものです。
それが社会なのだと思います。

モナは、その義務のない自由に向かったけど、
身動きできないひとりぼっちの破滅へと行きついたのね。
 
(お金を稼ぐためだけに仕事をしている人に
その職場で魅力が感じられないことと
関係があるかもしれないわ!!)。

モナは、見つけたはずだったのです。
好意を受け取る勇気を。
ただ、運命は過酷でした。

プライムビデオのリンクは下記より

冬の旅
管理人
アリサカ・ユキ

ぼくはずいぶん長い間とても弱かった。勝手な自己主張の上手い人たちに、いろんなやり方でいいように扱われていました。

物語からほんとうの強さというものを知りました。それは、なにかをわかること、そして、それへのやさしい想像力で得ることもできる、ということ。ぼくは卑怯な人に抵抗できるようになった。優しい人の味方になれるようがんばれるようになった。

あなたを翔けさせる素晴らしい物語たちを伝えたいです。

毎週、月曜日の更新を心がけます(変則的になる場合があります)。

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管理人はトランスジェンダーであり、トランスエイジです。

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