デビルズ・キス テンプル騎士団の少女
サルワット・チャダ:著
金沢瑞人:訳
メディアファクトリー
テンプル騎士は悪魔と戦う現代の騎士団だ。剣や斧、短剣を扱うけれども、車もパソコンも得意だ。
その入団試験で乗り気でないがついに騎士になったビリーは、団長で父親のアーサーから愛されていないと思っている。騎士として生きろ、と、厳しいことを欲求してくるばかりで、ぜんぜん、やさしくない。
そうだ、あたしのお母さん、つまり自分の妻さえ、あの人は、「自分以外の家族たち」を守るために、犠牲にしたのだから。
このお話は、少女であり、テンプル騎士であるビリーの、父とそしてもう一人との愛と、そして憎むべき悪魔たちとの戦いの物語です。
あらすじ
テンプル騎士から自由になりたいと思っていたビリー。まるで運命でもあるかのように決められていた、騎士になることは。
幼いころ別れた幼馴染、ケイがエルサレムから帰ってきた。オラクル、つまり預言者としての訓練を乗り越えてきたのだ。そして、彼が、その修行のあいだ、なんの連絡もビリーによこさなかったのは彼女には不服だ。彼もあたしを愛してない。
未来も決まってる。身近に愛してくれる人もいない。そんな人はどうしたらいいかな? 恋人を作る!? そして、一人の男性が現れるのだ。その恋は最悪の形で幕を閉じるのだけど。
さて、悪魔のミカエルは、国中の長子を殺すという呪いをかけるつもりだった。そうなれば、人間は神を畏れ、信仰を取り戻すだろう。
それを止めようとするテンプル騎士団の面々。敵はグールという人間の堕落した姿である醜悪な怪物を繰り出してくるが、ミカエルが本当に頼みにしているのは、「鏡」に封印されたほかの天使(天使から堕落したものが悪魔です。だからつまり「他の悪魔を頼みにしている」)。だ。その「鏡」を守っているテンプル騎士団は断じて許せない。
ミカエルは不死身だ。圧倒されていく騎士団の面々。鏡は奪われ、天使たちが解放される!! そのとき、ミカエルの兄弟というサタンが、ビリーに接触してきた。
ミカエルを倒せるつるぎを授けよう。その代わり父を殺せ!
できるわけない!!
ビリーはすぐに思う。でもサタンはいうのだ。
お前は愛されてこなかった。もし父であるアーサーがお前の立場なら民を救うためにお前を殺す、そう思わないか?
一つの予言があったらしい。『人々を救うためにあの子は愛するものを犠牲にする。』
まだ力が制御できないころのケイが予言したのだ。
ケイといえばビリーとのわだかまりは解けつつあった。『君の夢とか』守りたいのだと彼は告白したのだ。愛は、ケイも自分も持ち合っていたのだと、少女は悟った。
しかし、父親を犠牲にすることは正しいことのように思った。彼女はそれだけ傷ついていたから。
そして、予言は成就されるのでしょうか。
破滅の予感される雨と稲妻の街、天高く建てられた作りかけのビルの上へ、ミカエルを倒すために、サタンの渡してきた、悪魔を滅するつるぎシルバーソードを持って、エレベーターで登っていく、ビリー。
全ての最初に生まれた子供たちは滅び、世界は、神を信仰する国になるのか? それが、人間の幸福だろうか?
決戦はすぐです!!
総括。寂しい物語です。でもだからこそ愛の素晴らしさが伝わります。少女は心を強くする。
登場人物の多くの人たちが、生きることをできなくなっていく。わずか15歳の少女には過酷すぎること。しかし、見つけるのです。父親の想い。ケイの想い。愛する家族といえる騎士団の面々。それが本当に自分が持っていたものだと、わかった……のに、なぜ(という決定的なできごとが起きます)。失うことで人が強くなるなら、そんな運命はない方がいいですか? ぼくはときに思います。あの人がぼくの前からいなくなったのは、「このこと」を教えるためだったのではと。去っていった人、亡くなっていった人、悲しみはあったけれども、だからこそ強く胸に持つものが生まれた。
ビリーもまた、強くなるのだと思います。
《ささる言葉》
「地獄とは何だ、サングリアル?」サタンは両腕を広げた。「腹を空かして泣き叫ぶ子どもも、情けを乞うて拒まれるのも、夫と妻の間に生まれた裏切りも、すべて地獄だ」
「デビルズ・キス テンプル騎士団の少女」より抜粋
この世界こそ地獄というのでしょうか?
たとえそれでも、ぼくたち人びとは
泣きながらも、起こりうる
世界のあらゆる奇跡に感謝します。
それでも、もう、どうにも
すべてが
いかようにもならないって
思ってしまう人もいるじゃない?
そして、最悪の選択をすることも……
そうですね。
そういう選択をしなくてはいけないと
考えてしまった人がいることは
哀しいことことです。
神なるものがいるならば、
そのかたたちにこそ安らぎをを与えてください、
それは願います。
このご本はホラーな要素を含みます。
おそらく、中学生そして、高校生(には優しすぎる文章かもしれません)に向けた小説になると思われます。学生さんはもちろん読んでみて楽しいだろうし、大人のかたは、子どもさんやお孫さんにプレゼントするのも良いとも思います。また、ご自分ででも十分読むと楽しですよ!!