「魔女の冬 冬の王3」その人の意思は尊重する。それが受け入れ難いことであっても、その人の正義はその人のものだ。(著者 キャサリン・アーデン 創元推理文庫)

小説

魔女の冬 冬の王3
キャサリン・アーデン
金原瑞人・野沢佳織 訳
創元推理文庫

誰かの言葉や行いを受け止められないことがあります。

誰もがそれぞれの価値観を持っています。普段は優しい人でも、何かに対しては、はげしい憎しみを見せたり、また、とても嫌な人が、あることにはとても好ましいことをしていたり、そんなふうに、人というのは、単純にできているのではないと思います。

それはわかるけれども、どうしても「ああいうのは」受け入れられない

というものもありますよね。

この物語「魔女の冬」においては、世界はルーシと呼ばれており、そこには、人間と精霊とその精霊を統べるものたちが、それぞれに他を否定したり計算高く値踏みしたりして、安定した関係ではありませんでした。

少女ワーシャは、ルーシが一つになるのをめざすのですが。

あらすじ

ワーシャはモスクワの住民たちに囚われました。街を炎の海にした張本人ではあったからです。火炙りにされるのだ。彼女は、威厳を持って住民に対したけれども、その過程でソロヴェイ、大事な馬「小夜鳴鳥」が殺害されてしまいます。彼女が何よりも愛していた、存在。

そして、住民たちの憎しみと燃え盛る火から、あのルーシを混乱に陥れる元凶、「熊」が彼女を救おうとします。

難を逃れたワーシャは、行き着く暇もなく、夜しかない「真夜中の国」へ入り込む。そこで、あのとんでもない力を持った小夜鳴鳥がなんであるのか、また、同じように普通の人は持たない力を持つ自分がなんであるのか、を知ります。

精霊たちは、自分たちの信仰がなくなり消えていくしかないルーシ(世界)において、生き残るために、どちらかというと穏便な「冬の王」につくか、残虐だけど行動力のある「熊」につくか、はかりかねていました。そして、第3の勢力としてワーシャが選ばれたのです。

彼女は人間と精霊のと冬の王のために、邪悪といえる「熊」を封印する必要があると考えました。

それは、正解だったのか。

そして、ワーシャは、大変な危機を乗り越えるために選んだ方法が、ルーシをひとつにすることにもつながることに気づきます。

そのころ、ルーシは、タタール人の脅威に対抗するために協力しようとしていました。

戦争が、始まります。

その戦いの行方が、ルーシの人間と精霊と精霊のを統べるものたちの命運を決めるのです。

剣と弓矢と馬と鎧の軍隊のぶつかるときが、きました。

ワーシャは、さまざまな弱いものや迷っているものを守ったり受け入れたりしました。自身も弱さに悩み、決断したことに迷いながらも。そして、最も目を背けたい破壊的な混沌をもつものさえも味方にしたのです。しかし、それには強い意志と実際的な力が必要でした。

この寓意から多数の読み取れるものの中の一つを挙げるとしたら、

受け入れ難い何かを受け入れるということは、そうとう、自分に力を持たなければならないのではないか

ということを推してみます。

自分の弱さや迷いを振り切れる、そして、気に入らないものを見ても聞いても心を乱さない、精神力。または、相手の目に余る勝手を許さない実際的な力。

これがあって初めて、彼女は、精霊やその精霊を統べるものたちを制し、また、その精神力を見抜いた国の大公ドミトリーにも認められたのです。

もしあなたにいま、力があるなら、また、いつか力を持つであろう人たちに、この物語は、どのような精神を持てば良いのか、や、指導すべき人たちにどう接すれば良いのか、を考えさせてくれるかもしれません。

《ささる言葉》

「闇を駆け抜け、わたしを必要とする人すべてを救おうとしていたのよ。いいことも悪いこともしたけど、わたしがどちらかになったわけじゃない。わたしはわたしよ。マロースカ、あなたになんといわれても、恥じたりしない」

「魔女の冬 冬の王3」より抜粋

悪口をよくいう人とお話ししていると、

こちらもつい誰かの悪口を喋ることがあります。

 
その人が悪いというよりも、

ぼくにそう言いたい気持ちがあるのだと思います。

 
逆に明るい人とお話をすれば

こちらのお話も朗らかになる。そういうことってありますよね。

悪口って、一生懸命、

我慢して言わないようにって頑張ってるんだけど、

気の緩みっていうか、機会ができてしまったら、

言っちゃうわよ、あたし!

これって、あんまり良くないかなって、思いはするわ。

上記のワーシャのセリフは、

混沌を振り撒く「熊」と行動をともにしている彼女に

冬の王が警告した時に答えた言葉ですけれど、

まさに、ぼくたちがいま話したことにつながると思います。

 
「いいこと」をしようが「悪いこと」をしようが、

それは、ときどきのことで「根本の自分」がそうなのかはわからない。

「わたしはわたし」なのです。

 
ぼくたちは、自分が「善」か「悪」かなどと考えるよりは、

じぶんは

「こういう傾向に向きがち」

というようなことを把握するやり方で、

生き方をととのえていくのがよいのでは、と思います!!

冬の王1 「熊と小夜鳴鳥」 コンテンツ こちら

冬の王2 「塔の少女」 コンテンツ こちら

管理人
アリサカ・ユキ

ぼくはずいぶん長い間とても弱かった。勝手な自己主張の上手い人たちに、いろんなやり方でいいように扱われていました。

物語からほんとうの強さというものを知りました。それは、なにかをわかること、そして、それへのやさしい想像力で得ることもできる、ということ。ぼくは卑怯な人に抵抗できるようになった。優しい人の味方になれるようがんばれるようになった。

あなたを翔けさせる素晴らしい物語たちを伝えたいです。

毎週、月曜日の更新を心がけます(変則的になる場合があります)。

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管理人はトランスジェンダーであり、トランスエイジです。

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