受け入れて欲しいと思ったら、あなたもその対象を受け入れなくてはならない。価値観の一致が「その」理由というわけでもない。(ノスタルジア 監督アンドレイ・タルコフスキー)

映画

ノスタルジア
監督 アンドレイ・タルコフスキー
DVD
prime video

人は、ともに歩むべき相方と思えるものがいなければもろくあったりします。それが人なのか、組織なのか、世界なのか。

もしかしたら、それは才能という場合もあるかもですが、主人公の男性は詩人が生業であります。旅には彼には女性が必要なのかもしれません。そして、その住み慣れていない土地で出会った男は、人類すべての連帯というものが世界に必要だと思っていました。2人は同じものを求めています。愛です。そして、ともに、それを過去に失っており、再び手にしようともがいていたのです。

あらすじ

詩人のアンドレイ・ゴルチャコフは、母国ロシアからイタリアの地まできていました。思い人の女性と一緒に。彼の目的は、ある音楽家の伝記を書くこと。そのための詩想を求めていたのです。

ある男に会います。人びとが噂している男です。世界の終末が来るのを待って、7年間、家族を巻き込んで家の中に籠ったというのです。妻は子供を連れて出ていきました。

信仰心のとても強い人です。聖カトリーナという聖女を特に思っていたようです。貧しい人に自分の家が大変になろうともなんでも気前よく与えたと言われるかたです。

詩人は彼を夕食に誘いたいと言います。何かご本のアイデアを思いつくと考えたのでしょう。しかし、男が主人公に頼むのです。どうか、ヴィニョーニ温泉(というところ)で、蝋燭に火をつけて端から端まで歩いて欲しいと。そうすれば世界が救えるのだと。突拍子もない考えですが、男は本気でそう思っているのです。彼が自分でそれをしないのは町の他の人たちが、おかしいぞ、と、禁止してくるからです。

ところで、詩人に同行していた女性が、感情を害していました。愛を彼が示してくれないからです。そして、怒りをぶつけます。あなたは偽善者よと言って去っていきます。

詩人にもあの男と同じく、別れた家族がおり、その心傷をずっと胸に抱いていました。それが、愛しているとはいえ、その、そばの女性に一歩を踏み出せない理由だったのかもしれません。

そういうわけで詩人は「ふたたび」孤独になります。あの男は町から出てローマで演説を始めていました。すべての人びとは一つになれと。

男のその行為を聞いて、詩人も、あの約束を果たすことをするのです。

ヴィニョーニ温泉の端から端まで蝋燭に火を灯して歩く。それは、別れた家族への贖罪なのか、自分への救済なのか。

総括。詩人と女は、お互いの価値観を、あの男は、世界と自分との現実を、受け入れられなかった。

そういうことだと思うのです。詩人も女性も、お互いに相手への理想があり、そのように相手が動いてくれなかったことが「愛されていない」と思う原因でした。終末を待った男の方は、家族が離れたのは世界が間違っているからだと考えたように思えます。そして理想の世界をつくるために、身を捧げることにしたのではないでしょうか。

この映画を見るにあたって、詩人と女性の関係が気になることは確かで、その2人が相手のどこを受け入れれば結ばれていたのか、を、考えて視聴するのもおもしろいかもしれませんよ!!

《この映画のキーフレーズ》

『お前が存在するのではない 私が代わりに存在する』

「ノスタルジア」劇中のセリフより引用

これは、終末を待つ男の信仰する聖カトリーナの言葉らしいです! この男は神の代わりに、詩人はその男の代わりに、それぞれのことをしたのです!! それはもちろん究極的には自分のためかもしれません。ぼくは思いました。彼らは、愛を捧げる相手をまちがったのではないでしょうか?

でも、おもうのだけど、間違ったことでも、それをする以外に、二人にとって、自分をたすける道はなかったようにも見えたわ。

そう、ですね。人は各々の仕方で生きることに折り合いをつけねばなりません。できうるならば、「代わり」でそれをするのではなく、そのようにどうしようもなくなる前に、いちばん「大事なこと」でそれをして欲しいと思います!!

primevideoでの視聴は下記まで。

管理人
アリサカ・ユキ

ぼくはずいぶん長い間とても弱かった。勝手な自己主張の上手い人たちに、いろんなやり方でいいように扱われていました。

物語からほんとうの強さというものを知りました。それは、なにかをわかること、そして、それへのやさしい想像力で得ることもできる、ということ。ぼくは卑怯な人に抵抗できるようになった。優しい人の味方になれるようがんばれるようになった。

あなたを翔けさせる素晴らしい物語たちを伝えたいです。

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管理人はトランスジェンダーであり、トランスエイジです。

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