もし、あなたは自分に戦う力があるとすればどうしますか? それは過酷な道だ。世界に対して肯定するか否定するか、つねに選ばなければならない。この物語の主人公キーディも理不尽と戦います。だけど、彼女は自分の傾向を知ります。
「一人ひとりを正すのはあたしの役目じゃない。でも、あたしを必要としてくれている、たったひとりのために、できることがある……」
自閉症であるということで、人より感覚の幅が広く、生きることは過酷だ。世の中の大多数の人たちと合わない人生なのだ。
キーディは、小さな妹を思う。この子も自分と同じなのだ。あたしみたいな目に合わせたくない。
(あらすじ)
キーディは、あることがきっかけで学校で「いじめ退治」をすることにした。お金をもらってだ。
学校はいじめに取り組んでいるという。でも、助けられていない人ばかりだ。
校長先生に呼ばれて、親にこの子はいじめ退治と称して相手を殴っていると言われる。
『殴っていないし、殴る約束をしたこともありません』
お父さんはキーディに支払われたお金を見て言う。
『これだけ多くの子たちが、いじめを何とかしてほしいと思ってることだろ?』
声の大きい人がいつでもいい目を見て、おとなしい人が犠牲になる。
『あたしが一度間違ったことをしたからって、あいつらがこれまでやってきたことは全部水に流すってわけ?』
キーディは、先生の一部から大変嫌われており、また一部から大変好かれていた。
村の創始者のことについて学校でスピーチしてほしいと言われていた。そこで、その創始者のことから弱いものを押さえつけて暴力を振るう人を非難することを発表した。
先生たちはそれぞれの反応をする。その中で、見失っていた双子のニナと絆を取り戻す。
彼女は自閉症だ。ニューロテピカル(定型発達。発達障害ではない大多数の人たち)の中で、ただ生活するだけでも苦しい思いをしている。
たくさんのことがあり、キーディは、生き方を模索していきます。
なにより、末っ子のアディへの想いが育っていくのです。
※『』内、本文より抜粋。
戦うことがいつでも正しいのだろうか? 自分への誰かへの理不尽はそれが思い込みでないなら、許されるべきことじゃない。そんな、ひどいことって世の中ある? と思うでしょうか? もしあなたが、不愉快なことをされたら仕返しをできる人間ならば、気持ちはそんなに鬱屈したものでないかもしれない。でも、多くの人は我慢している。そして、自分がおかしいのかな、自分さえ我慢していればいい、と考えがちではないでしょうか。ようく、論理的に考えたら、おそらくあなたは間違っていない。相手がおかしいのだ。ひどいのだ。でも、あなたもまわりもあなたが我慢することでいざこざが起こらないならそれに妥協している。
そうです。社会で生きるには、そんなことはいつものことだ。意地悪で、力のあるものに対してだけいい顔をする人は、小さな場所でのさばっている。
キーディは、そんなことは許さない。言葉の力で、追い込んでゆく。おそらくそれは、彼女自身を守るためでもある。自閉症の自我の出し方を気に入らない人がいるからだ。気に入らない人に意地悪する人はいる。たいていの人の意地悪は、誰かに説明しにくいいやらしさで行われる。それを突くために彼女は言葉を発達させたのかもしれない。
しかし、戦っても、彼女はすがすがしい気持ちにはならなかったようだ。ただ、「嫌なことをする人」への嫌悪感ばかりが増えていくようだ。それは、彼女がすることを次々と許さない人たちがいたからだ。
自分が都合良いことばかり言っていて、いじめを正当化していて。世の中はこんなことばかりなのだろうか?
それでも、彼女の周りには、素晴らしい人たちがいたし、これからもあらわれる。
そして、そう言う人たちから救われるのだと、物語は言います。

語りのミニシアター

キーディは強いなって思ったわ。

確かに。神経が太いと言うか、
泣き言は言わないですよね。
大人から、卑怯なことをされても。

そしてちゃんと張り合ってる。
言わないのは泣き言だけで、
言うべきことは言う。

じっさい、
心の健康のためには、
相手の勝手に対してはものを申した方が良い、
と言うのはあります。
限界過ぎても我慢したために、鬱など精神的な病になる人も多いのですもの。

でも、なかなか言えないよね。

彼女の両親は
とても賢明でやさしい二人です。
キーディのように社会が持っている悪いところに気付きながらも、
「戦う」わけではありません。
それでも、(二人はもちろん脇役ですが)
人格に徳高いものを感じました。

どこか別の本で読んだけど、
人は何かに対して「どう反応するか」が問われている、って。
子供は喧嘩できるけど、
大人は喧嘩するのは難しいものね
(これは相手も縛ることであり、あえてあなたが相手の勝手に異を唱えてみると、すんなり引く場合があります。要するに、言ってみて、してみて、通れば儲け物という考え方でいるのです、そういう人は)。

ただ、
彼女の理不尽を「論破」するロジックは 読んでいて、
おもしろいな、たのもしいな、って思いましたよ。
なにより、理不尽に翻弄されないために
理不尽のカラクリは見破らなくてはいけないでしょう。
そういう意味でも、
大人にも子供にも読んで勇気のでる(楽しい)物語です!!
下記、ご本です。